東本昌平『キリン』24巻

キリンの現行の筋はかなり娯楽的な方向で話が展開してきていたが
松本なんとかという男の放火という行為によって急に
話が現実的な世界に返ってきてしまったような気がする。
23巻あたりから東本は路線を修正してきているのかもしれない。

もしくは北海道でのバトルから始まる現行の筋自体も
東本にしてみれば現実として描いてきたのかもしれない。

ランブルが放火され店が全焼したりZZR等が焼損しても
何故か怒りが伝わってこない。
ガルーダに乗り込み怒りをぶちまけるグリフォンのメンバーの
様な感情の揺れは自分でも感じられない。
つまり感情移入が出来ない。
今なら多分例え自分のバイクに放火されても、何も感じないかもしれない。
バイクどころか自分が火だるまになっても、
苦しいとか熱いという感情以外には何も感じないのかもしれない。

キリンの最新刊はそうして自分の腐った魂に警告を発して
くれているのかもしれない。

あるいは自分の魂なり肉体に対して杜撰な打算が
働いて、減価償却期間が過ぎたと判断し
自分自身に対して価値無し!と判断しているのかもしれない。

悟りと言えば聞こえがいいが、人生に対して
ある種の諦めが始まっているのではないか?

キリンを描いている東本も娯楽ぽく描きながら
かなり現実、それもつまらない現実の表層を
なぞる様に淡々と描いているのかもしれない。