Such a country 1

中国に行ったので次はインドに行こうと決めていた。次の年のGW(ゴールデン・ウイーク)にインドに行った。丁度、自分で究極のカレーを追い求めていた頃なので、ニュー・デリーに着いた日からガンガン本場のカレーを食べていた。三日目だったかにスリナガルに飛んだ後くらいから強烈な下痢が始まった。それからは水もロクに飲めず必死で旅を続けた。なんせ腹に力が全然入らないので踏ん張りがきかない。成田に帰り着き検疫で止められたが、飛行機で酔っただけで下痢はしていないと言い張って強引に入国した。伝染病はこうして蔓延していくのだろう。インドに行った事も体制側には隠していたので、下痢をしているなどとはとても言えなかった。下痢はインドの大地がくれた挨拶だと思い、常にニュートラルな姿勢で対峙した。連日下半身にだけ旅の余韻が残っていた。朝は何も食べないが出勤してしばらくすると決まった時間にもよおしてきて、毎日毎日律儀な下痢便君が顔を出した。それでも平静を装って一日も会社を休むことなく仕事を続けていた。辛いとは思わなかった。多分、法定伝性病に類する何かだったと思うが幸い2次感染者は出なかったのでただの下痢だったのだろう。丁度、インドで下痢が始まってから丸40日目、6月の10日の朝、恐る恐る会社のインスタント紙コップコーヒーを飲んだ。実際には糞不味いコーヒーだけれども、久々でとても美味しかった。期待半分で挑戦してみたが、予想は当たり、その日からピタリと下痢の症状は消えた。コーヒーが飲める体に戻った事に感謝した。意味も無く嬉しかった。一方で下痢君が何処へ去って嬉しい反面、少し寂しくもあった。僕の自己ベスト連続下痢日数は40日で止まってしまった。ひょっとしたら一生続くのでないかと半分覚悟はしていた。それは、それでも構わないとも思っていたし、突然ポックリ死んでしまうような下痢でもないと思った。それとも北海道で体内に宿ってしまったエキノコックス病の症状が現れたのかとも考えていた。初めて行った北海道で生水をガンガン飲んでいて、帰ってきてからそんな病気がある事を知った。
 インドの事を思い起こすとついつい関連してアフリカの事を考えてしまう。しかしアフリカという言葉から沸き立つ具体的なイメージは無く、ワクワクさせてくれる何かも無い。