『奇子(あやこ)』手塚治虫
手塚治虫の漫画を盲目的に絶賛する人が多いが全作品がいいとは思えない。
その点この『奇子(あやこ)』は秀逸であると思う。
時折時間をかけてゆっくりと再読する。
性や暴力(戦争)をテーマにした他の作品もあるがこの作品は特に
秀逸である。
他に秀逸なのは『どついたれ』だがこれは未完であり残念である。
手塚治虫には近未来モノよりこれらの昭和の暗部をテーマにした
作品をもっと描いてもらいたかった。
司馬遼太郎でさえ避けて通った昭和という時代を描いてもらいたかった。
幕末から明治にかけての英雄的日本人を絶賛した司馬遼太郎は
その後にやって来る昭和という時代とその暗部を
避けて通った。
この点、開口健なら描けたと思うのだが、
今では誰も彼もこの世には居ないのでそれすら望めない。
そして昭和という時代さえ忘れ去られようとしている。