Into a Black Sun

またしてもサイゴンに降り立つ機会に恵まれた。
今回はただの中継地である。

離陸時以外はずっと『輝ける闇』を
読み続けた。

25年前に一度受けただけの衝撃を再度受けることになった。

戦争そして孤独の本質について
かなり深く考えさせられる。

何のための戦争なのか?
 別にどんぱちだけが戦争ではない。
外交も経済もそれまた戦争である。

 所詮は動物同士なので殺し合いしかないのである。

昆虫や魚類であればとっくにお役目ご免となっていた筈なのだが
人間だけが醜悪な生き様を晒し続けて生に固執
あらゆる欲に固執する。

 そんな小さなこだわりにまみれて小競り合いを繰り返す
小さな人間たち。
 蟻の群れの方がままだマシだと思う。
 
 ウンザリである。

今年に入ってから何度も、もう思い残すことはない、
今夜地震がきて死んでもいいと思う夜ばかりである。

それでもまた陽が登り新しい朝がやってくる。

それではそれで幸福なことかもしれないが、
でも自分の理想とは随分違うものである。

 自分が設計した家に住みたいとか
 フェラーリを転がしてみたいとか
 起業して金持ちになりたいとか

 そんな間抜けな欲望を持った時期も少しはあったが
随分と前にそんな欲なんて雨散霧消に消えてしまった。

 贅沢も沢山させてもらった。
 豊潤で豊饒な世界で色々な体験をさせてもらうことも出来た。

 物なんか要らないと言いながらついつい物が増えてしまう
自己矛盾を抱えて生き永らえている自分。

 いっこうに満たされないその理由については自分が一番
知っている。しかしそれを言葉にすると全てが瓦解してしまうので
突っ走るしかないのである。

 簡単に言うと全てのモノは全て手の中にあるというより
そういう世界には既に入り込み形成すること自体はとっくに完了
している。
 ただ進化系なのでその世界は日々刻々と変わっているのである。

色々な欲望に関して
 欲していないというとまるで偽善者の様に受け取られる。
他人にどう受け取られようがどうでもいいが
説明するのがただただ面倒臭いのである。

 ただただ別の荒地を目指すだけである。