『そこのみにて光輝く』佐藤泰志 河出文庫650+税  『苦役列車』西村賢太 新潮文庫400円+税 9.30€

佐藤泰志の『そこのみにて光輝く』という表題の『そこのみ』が『底』なのか『そこ』なのか
『底』と『そこ』の両方を指し示すのか読後にずっとひっかかっている。
多分、それは『底』である『あそこ』でのみ光り輝く、という意味ではないかと思う。
佐藤泰志の小説に出会ったのは全くの偶然である。
手元に手繰り寄せてから実際にその映画を観るまで
海炭市叙景』は台湾を舞台した台湾の映画だと思い込んでいて。
観始めてしばらくすると、舞台が函館にしていることを確信した。
いきなり佐藤泰志の全著作を揃えるのも芸が無いので数冊手に入れた内の
一冊がこの『そこのみにて光り輝く』である。

ここから本題に入るわけではあるが、こんなところに
書く必要がないため割愛する。

苦役列車
あまり見た事の無いような漢字が使われていたり、カタカタ外来語の使い方も
なんだかミスマッチなところが多々ある様に感じた。
小説なので好き勝手に文字を組み合わせるのは作家の自由なのでそれについて
良いも悪いも無いのだが、言葉の使い方で違和感を感じる箇所がかなりあった。

本来ならば唾棄すべきすかした連中のあちら側(ここでは所謂”文壇”とやら)に媚びへつらう
その心情を『落ちぶれて袖に涙のふりかかる』に綴っている。
だれでもその種の気持ちはあるのではないか?
それを正直に出すか出さないかの違いだけではないか?とは思うが。
反骨心だけは失いたくないと思うのである。

"学閥","文壇","画壇"どれもこれも糞喰らえ的な世界であると今でも思っている。